◇よぎる。

時々、不安がよぎる。
よぎるだけで、ちゃんと強い意志で打ち消されるけれど。
たぶん、ちゃんと食べて体が元気だから、
前向きに生きる力があるんだと思う。

よぎる不安。

どうして、自分は今ここに独りなんだ。
もう帰りたい。彼氏のところに帰りたい。
家族や友達にすぐに会えた場所に帰りたい。

打ち消す力。

寂しさで、彼に依存してどうするんだ。
彼には私に何の責任もとれない。
いや例え、他の誰かが結婚してくれるとしても、
寂しいから、という理由じゃない。そういうものじゃない。
相手に負担をかけるわけにいかない。
それに、結婚で孤独から解放されるわけじゃない。
いつ離婚するか死別するかわからない。

家族のところに帰りたい。
でも、両親はいつか私より先に逝ってしまう。
いまさら、心のよりどころにするわけにはいかない。

一瞬の孤独が、むしょうに故郷に帰りたいと思わせる。
でも、そのたびにこうやって打ち消していく。
帰ったって、何も変わらないんだと。
ほんのちょっと、人恋しいから吹く隙間風だとわかっている。
それなら、ほんのちょっと友達を作れば済む話だと。
だから、それ以上深刻にはならない。

自分の内側におこった隙間風だから、
自分の内側から、どうにかするよりない。

どこにいたって、自分は世界に独りで立っている。
だからこそ、他人が必要で、
周りの人と笑いあって生きていけるんだ。

そういうことがちゃんとわかっているから、
一瞬の不安は、ちゃんと次の瞬間に打ち消されてゆく。

孤独、ホームシック、心細さ、
そんなんで、突然泣きたくなる瞬間は、
どうしてもやってきちゃうんだけどねー。
仕方ないなぁ。人間だし。

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