王朝時代のフランス
女性たちは、髪が長いほど美しいとされ、
下町の女性たちは、自分たちの仕事に邪魔なのと
長髪を美しいまま維持するための、
手入れ用品にかける金銭がないため、あまり長くはできずにいたが、
宮殿に上がる貴族階級の女性たちはこぞって伸ばし、
金銭の余裕度を暗に誇示していた。
貴族階級の女性たちの中でも一目置かれているのは、
長い髪をドレスの上から、胸元から足先まで自分の体に巻き付け、
さらに足元かららせん状に広げ、その下にドレスのすそが輪に広がり
まるで、立っているだけで芸術作品のような彼女。
名は、ローラ。
元々も、色白で群を抜く美しい容姿を持つ娘。
家柄も申し分なく、
若き次期皇帝の、一番の正妃候補。

ところが、彼女は禁忌を犯した。
別の男性との交際が発覚。
元々、結婚した女性はもとより、
婚前でも、女性が、この人と決め、
忠誠を誓った男性以外と関係を持つことは、
法律で重罪とされている時代。
相手が次期皇帝ともなれば、死罪。公開処刑。
彼女を捕えるため宮殿へ向かう警備隊
舞踏会の準備中の宮殿内で、異変。
ローラは、1000人の侍女を毒殺すべく
休憩用のお茶に毒をいれる。
ローラには、お付きのおばばがいた。
醜女で、華やかなローラの影で汚い仕事を一手に引き受け、
ローラを守る存在。

大量殺人に混乱する宮殿内で、わずかに命を取り留めた侍女のため
解毒剤の精製が急がれる。
おばばはローラを先に逃がし、自身は精製場所に立ち寄り、
解毒剤にさらに毒を盛る。
しかし、警備隊に見つかり、命を落とす。

夜。ローラは覆いで髪と顔を隠しながら、
下町の、人気の少ない酒場にいる。
ある人物がくるはず。

昼間、おばばに連絡をつけさせた、妹のアリシア。
幼い頃、離れ離れにさせられ、下町の貧しい夫婦に預けられた、妹。
おばばが付き人として付くようになってから、探させ、
一度だけ会った。
身なりこそ汚いが、面影はローラとよく似ていた。
ーーいつまでも、逃げられはしない。
明日には捕まり、明日中に処刑は実行されるだろう。
チャンスは、今夜しかない。

姉が会いたがっていると聞き、酒場に向かうアリシア。
幼いころの記憶も乏しく、
一度再開した時もあまり話せず、
朗らかで上品な微笑みからだけでは、姉が実際どういう人物なのか
未だによくわからない。
一体、何の用だろう、と思いながら向かうアリシア。


酒場で、二人は再会する。
「アリシア、あなた、幼い頃、アメリカへ行くのが夢だっていってたのよ。
絶対、いくんだ、って。
けれど、このあいだ、久しぶりに再会した時、あなたに
『まだアメリカに行きたいの?』って聞いたら、
『ええ、そうね、行けたら素敵だろうなって思うわ。』
って、答えたのよ。覚えてる?」

「ああ、ええ、そうだったかしら。それがどうしたの?」

「そんな弱気じゃ駄目よ。幼い頃のあなたは、
本当に、まっすぐ自分がアメリカに行くって、強く信じてたわ。
なのに、こないだのあなたったら、まるであきらめているかのようで。
本当は、行きたいんでしょう?
私も、あなたにはアメリカが似合うと思うわ。
弱気なあなたが、あなたらしくない気がして。
どうしても、あなたに、夢をあきらめないでって、
伝えたかったのよ。」

二人は、一晩、語り明かした。
ローラは、自分の明日の運命を知っている。
アリシアは、まだそれを知らない。
ただ、アリシアはその晩、二つのことを確信した。
一つは、初めて知る、姉の人柄。
とても朗らかで強く、自分を思ってくれる、本当の姉なのだということ。
二つ目は、近い将来、自分はアメリカへ行くだろうということ。

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